チャールズ・エリス「敗者のゲーム」より
長期投資における最大のリスクは、インフレと、投資家自身が感情に
左右されることで生み出す不要なリスクである
こんばんわ、きしやんです。
ここ数年の投資環境の改善によって、以前にも増して米国株投資一辺倒の人が増えた
気がします。投資とは全てが自己責任の世界であり、その投資方法・スタンスに
絶対正解はありません。しかし、その絶対正解がない投資の世界に於いて、
ほぼ間違いのない事柄があります。
ビスマルク:愚者は経験から学び、賢者は歴史から学ぶ
バフェット:人は歴史から学ばないということを学ばないといけない
そう、人間は同じ歴史を何回でも繰り返すということです。
私は投資の世界に於いて『買っておけばよかった』という『後悔』が多分にあると
思っています。今回の記事の中で、御自身の投資スタンス・スタイルを考える何かの
切っ掛けになれば幸いです。念のためですが、米国株投資を否定している訳では
ありません。私のポートフォリオも、米国市場は50%を超えています
1.米国株投資はブームである
下記グラフは、先週公開した記事で添付したものです。
つみたてNISAで投資しているアセットクラスはどこですか?の質問に対して Twitter
利用者を対象に不特定多数の投資アカウント681人が回答してくれました
結果は御覧の通り、米国株投資の人が50%以上です。
世界時価総額比率と言えばそこまでなんですが、とてもそうとは思えません。
Twitterで交流させていただいているHIRAさん(@Open_JP)も違った観点で
アンケートをとられていましたが、結果はほとんど同じです
VTI(米国):55%
VEA(米国除いた先進国):5%
VWO(新興国):26%
このアンケート結果と米国株市場の過去リターン に、関係性はないのだろうか?
さらに掘り進めます。
1-1:負け犬はのこのこと出てこない
なぜ米国株投資はここまで人気なのか?
リターンの観点で、Yahooファイナンスにて上記3つのETF、VTI(米国)、
VEA(米国除いた先進国)、VWO(新興国)の、過去10年少々のリターンを
見てみます
上記チャートを見る限り、過去10年は米国市場にだけ投資をしていれば正解でした。
実際にTwitterや投資ブログを見渡すと、米国株投資で財を築き・成功した人が多いのも
事実です。
しかし今、米国投資を推奨している人達は投資先が『米国のみで良い』と判断した
理由に、理論的な整合性はあるのでしょうか?
いわゆる、バスに乗り遅れるな!という潜在意識が先行してる気がします。
ここで『ブラックスワン』で有名なナシーム・ニコラス・タレブの著書『まぐれ』より
重要な部分を引用します
起こる可能性のあるすべての歴史の中から、その一つがまっく偶然に
実現しただけなのに、私たちはそれを全体の代表的な一つだと思い込み、
他にも可能性があったのをすっかり忘れてしまう。
端的に言うと、生存バイアスがある場合、一番成績がよかった結果が
一番目につくのだ。どうして?負け犬はのこのこ出てきたりはしない
からである。
1-2:CAPEより、米国市場の向こう10年間のリターンは期待できない
The Financial Pointerで、債券王ことジェフリー・ガントラックが興味深い事を
発信しています
・1980年代 日本と日経平均の時代
⇒バブルが弾けると、30年経っても下げたまま
・1990年代後半ユーロ圏の時代
⇒2000年、欧州市場は崩壊し、20年経っても下げたまま
・2005-07年:新興国市場の時代
⇒世界金融危機で「殺戮」され、下げたまま。
”次の景気後退では同じパターンが繰り返すだろう。米国が打撃を受け、
他の市場をアンダーパフォームし、ドル安になる。この理由から、
6-8年の長期計画を練る上では、少しずつゆっくりとドル以外の投資対象、
米国以外の株式市場へ配分していくべきだ。
債券王ジェフリー・ガンドラックの驚愕の推奨:次の不況はドル安に – The Financial Pointer
ガンドラックの発言は思いつきなのだろうか?
そうではないと感じられる理由が、CAPE(シラーPER)より明らかになります。
CAPEとはPERと違って、景気循環の影響を加味した株価の割高、割安を見ることが
できる指標です。現在のCAPEが高い市場は、その市場のリターンは向こう10~15年
低迷する傾向にあります。詳細は、下記の野村證券用語集を参照。読み飛ばして
もらってもOKです
CAPEとは?
CAPE(Cyclically Adjusted Price Earnings Ratio)は、株価の割高感を測る
投資指標でPER(株価収益率)の一種。PERは株価を一株当たりの当期
純利益で割って算出することが多いが、単年度の一株利益を使用すると
変動が大きくなることもあり、CAPEでは過去10年間の平均利益に物価
変動を加味した値を一株利益として指数を算出。景気循環の影響を
調整した株価の割高、割安を見ることができることも特徴の一つであり、
景気変動調整後のPER(株価収益率)とも言われる。CAPEでは割高、割安
の分岐点は25倍程度と言われている。
下記表は、StarCapitalが作成したCAPEとリターンの相関・実績のレポートです
CAPE(上段の横軸)が高くなるにつれて、国毎の実績リターンは逆比例で低下して
いることが分かります。相関係数(Cor)の逆比例の高さに驚きます。
次に下記は、世界中のCAPEを表した地図になります。赤くなればなるほどCAPEが
高いことを意味しており、米国に至ってはCAPEが29.2にもなります。
米国のCAPEがほぼ30という状況からすると、米国市場の向こう10~15年の
リターンは-0.4%ぐらいと予測されます。これらのことから、ガンドラックの発言の
整合性がとれることが分かりますね。これから10年先、米国市場のリターンが仮に
CAPEの予測通りに低迷し、他国のリターンが高騰したとしましょう。
そういう時こそ、『買っておけばよかった』という後悔に陥る可能性があるのです。
1-3:生活圏を無視してませんか?
投資先は米国市場(S&P500)のみで言いと主張されている人は、ウォーレン・
バフェットやジョン・C・ボーグルの考えが多分に影響しているのでは?と
推察されます。
しかし忘れてはならないのが、米国に住んでて米ドルで生活している人達は、私たち
日本人ほど為替の影響を受けません。我々日本人が用いる円という通貨は、経済危機の
度に株価下落と通貨高による往復ビンタをくらうことを、忘れてはならないのです。
2.それでも米国市場を無視することはできない
冒頭でも申しましたが、私は米国株投資を否定している訳ではありません。
なぜなら米国市場が世界時価総額比率に占める割合は50%超にもなるので、資産運用で
米国市場を無視するということはできないからです。
2-1:永続する会社が本当の利益をもたらす
例えばマイクロソフト(MSFT)なんかは、今では社会の基本インフラにまで根付いて
います。他にはP&G(PG)、マクドナルド(MCD)など、米国には我々の生活に
密接に絡んだ企業がたくさんあるのも事実です。しかし上記企業達が、これからも
永続するかどうかは分かりませんので、そこを見極める目が必要になります。
つまり「米国市場」と「永続する会社」というのは別の見方をする必要がある気が
しますね。
2-2:収益の分け前としての金利
お金は放置していても増えないので、お金を預けると金利が貰えるということは、
誰かがそのお金を使って収益を生み出している考えも成り立ちます。
先日読んだ『マイナス金利』という本に、以下の記述がありました。
文章を一部要約します
フィッシャー方程式の関係は
名目成長率=実質成長率+GDPデフレーター
つまり実質金利は長期的には実質成長率に収斂するはずである
先進国の中で短期&長期にまともな金利がついているのは米国市場のみです。
金利の観点からも、やはり米国市場を外すことはできません
3.長期投資を掲げてるのに、短期リターンを重んじてませんか?
全てはこの見出しに集約されます。
タレブが(まぐれで)言うように、我々人間というのは一番成績がよかった結果が
一番目につく傾向にあり、本能がその呪縛から逃れることは容易ではありません。
これは歴史が物語っています。
人によって目標とする投資リターン・とれるリスクが異なるので、投資手法・
スタンスの絶対正解はありません。長期投資の過程で、10年後・20年後を振り
返った時に、今回の記事がポートフォリオを考える切っ掛けになれば幸いです。
ほぼ同じ時期に類似したコンセプトの記事を、東北投信を運営されている未来さんが
作成されております。
最後にチャールズ・エリスの著書『インデックス投資入門』より一文を引用して
終わりにしたいと思います
よくできたインデックスファンドのような市場全体の構成から自分の
資産配分が離れてしまっていると、離れてしまっている分だけ追加的な
リスクを負うことになる。
皆様、良い投資ライフをお過ごし下さい☆
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