こんばんわ、きしやんです。
米国企業は3Q決算も悪くなく、株価は年末にかけて上昇の一途で終わりました。
S&P500の株価にいたっては隠れQE4も後押しして、年初来27%増加と絶好調
でしたね。
投資ブロガーさんや金融メディアでも、企業の利益が株価に反映された好調な決算に
関するレポート記事がたくさん発信されておりました。理論株価の算出の1つに、
『自己資本+予想収益』という考え方がありますので、『企業利益が出る≒株価上昇』
のロジックは成り立ちます。
そして皆が口を揃えて言います。『稼げる米国企業は強い』と。
しかしそれは本当なのでしょうか?
人間の脳には、特定の線グラフに対してバイアスを感じてしまうのを御存知ですか?
今回の記事では人間の脳が抱く錯覚と、株価と債券の価格は何が真実なのかを
考えたいと思います。
1.直線本能という錯覚
さて、下の線グラフを参照ください。
ちなみにこの線グラフは、私が適当に描きましたが、皆様はこのグラフを見て、
どのように感じましたでしょうか?
私の予想では、読者様は以下のようにイメージされたと思います。
いわゆる右肩上がの線形グラフですね。
しかし私は『どのように感じましたか?』と聞いただけであって、適当に描いた
線図は緩やかに水平線図になる可能性もあるし、そのまま右肩下がりになる可能性も
あります。しかし、大多数の読者様の脳内では『右肩上がりの線図になる』とイメージ
されたでしょう。
この様に線グラフに対して脳が勝手に規則性を『感じる』ことを、『直線本能』と
いうそうです。詳しくは、FACTFULNESSをご参照ください。
2.嘘をついてるのは株式か?債券か?
債券は株式に対して逆相関を動きをする傾向があるので、債券に投資することで株式の
リスクを分散する効果があります。しかしその債券に関しては、金利と債券価格も
逆の関係性があるので、いまいち理解しにくいとこがありますね。
株価・金利・債券価格の関係性をイメージ化すると以下のようになります。
株価上昇局面では金利が上昇して『債券価格が下落』することから、債券は株価に
対して分散効果があるのです。しかし、注視してほしいのは株価と金利の動きには
相関関係があることです。そして債券がチャートで表示されているのは債券価格では
なく、『金利』だということが重要なんですね。つまり、金融情報のチャートでは、
株価と債券のチャートには相関関係(債券価格に対しては逆相関)があるということ。
・・・ややこしいですが、頑張ってついてきてくださいw
次に、JPモルガンが発行している米国の株価指数であるS&P500と、米国10年債券の
『金利』チャートです。 ※株価と金利は同じ動きをする傾向にある
縦軸スケールが異なるので判りにくいですが、株価と金利は概ね同じように動いて
おります。つまり、債券が株式に対して分散効果を発揮しているわけです。
読者様はお気づきになれてたと思いますが、横軸のスケールが2019年初頭で終わって
ますね。実はあえてトリミングしました。では、2019年以降のチャートすべて
表示しましょう。
おやおや。株価と金利はある程度相関関係があるはずなのに、2019年以降のチャートは
完全に逆相関です。つまり、株価と債券価格は相関関係にある=分散効果が消失して
いることが判ります。
さてここで交友のある「もニキ」こと、もみあげさんが先日アップされた記事を
紹介します。
もニキの記事を拝見しましたが、社債市場を中心に債券のバブルが発生している?
とのことです。私も同感で、特に社債市場は怪しい煙が立っていると感じてます。
ここで1つの疑問があるんですよ。もニキや私だけでなく一部のファンドマネージャー
からも、債券市場はバブルだとの見解がチラホラ聞こえてくるんですよね。
しかし、株価がバブルだとの声は聞こえてきません。株価と金利は相関関係があるにも
関わらず、債券市場は怪しいと言うのに、『株式市場は怪しい』との声はあまり
聞こえてきません。
これは何故なのか?
これは私の推察なんですが、我々個人投資家はジェレミー・シーゲルが作成した
グラフによって、株式のトータルリターンには直線本能のバイアスがかかってるの
ではないでしょうか?
(我々の脳内)
・株式リターンは、これまでずっと上昇してきた
・だからこれからも、株式リターンは右肩上がりの一途を描く
・だから株式が右肩上がりに上昇するのは正しい
みたいな?
上記グラフを見る限り、債券はサチレートしている=伸びないと受け取れそうですが
株価は右肩上がりで上昇しそうな勢いです。
さてこうなると、今の市場価格が不安になりますね。JPモルガンが作成したチャートを
再び添付しますが、株価と金利が鰐の口のように開いております。
はたして株価と金利、どっちが正しいのでしょうか?
上記チャートを見る限り、株と金利(=債券価格)のどちらかが嘘を付いている
可能性があります。いや、そもそもどちらも嘘を付いている可能性もあります。
さて、冒頭の話に戻りましょう。
稼げる米国企業は強い
この見解は、本当なのでしょうか?こう判断したのは、我々の純粋な意志なので
しょうか?これまで株価が上昇してきたことによる、『直線本能』のバイアスが
かかっている可能性はないのか?
株価を疑わない他の可能性として、確証バイアスや利用可能性ヒューリスティックスの
可能性もあります。企業(株式会社)は債券と違って身近な存在なので、それによる
安心感=分かった気になっているというバイアスです。
そして何が正解かは分かりませんが、1つだけ確証できることは
長期的には適正価格に収斂する
ということです。
参考までに、株価と企業成長率から割り出す『バフェット指数』のチャートを
添付します。100を超えると、株価が割高だということを意味します
冒頭の話に戻ります。理論株価が企業の将来利益から算出されるのなら、株価は
企業成長率に比例していることになります。つまりバフェット指数は概ね「100」に
近づくはずです。ところが、バフェット指数を見る限りそうではありません。
不思議ですね。
我々は、企業の決算書を正しく認識・理解しているのでしょうか?
あまり理解していない債券は無視して、株価は正しいと思い込んでしまってないで
しょうか?
その答え合わせは時間が解決してくれるでしょう。そのためには適切なリスク範囲で
待つしかないですね。最後に心の師匠であるハワード・マークスの著書
『市場サイクルを極める』より、一文を引用して終わりにしたいと思います。
すべてが順調で資産価格が上昇しているとき、投資家は未来はバラ色だと
感じ、リスクは自分の味方であって、利益も簡単にあげられると考える
傾向にある。
それでは皆様、よいお年をお過ごしください。
気が向いたら、年内にもうひと記事書こうと思います
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