こんばんは、きしやんです。
中野剛志さんの新刊『基軸通貨ドルの落日 トランプ・ショックの本質を読み解く』を読んでいます。
経済や金融を語るうえで貨幣発行のメカニズムと国債の関係性を理解しておくのは非常に重要なんですが、意外なことにそれをきちんと説明できる人は多くありません。
金融の専門家や学者でさえ、金本位制の時代に作られた古い枠組みにとらわれたまま議論していることが少なくないのです。
その点、中野さんは貨幣発行のメカニズムをよく理解していて、しかも膨大な知識を背景に現代経済や世界情勢を分析している数少ない論者の一人。そんな中野さんが「基軸通貨ドルの落日」というセンセーショナルなタイトルで新著を出されたのを知って、手に取りました。
まだ冒頭を読み進めているところですが、第1章に「トランプ・ショック」をめぐる背景が詳しく論じられており、非常に興味深かったので要点を紹介したいと思います。
第一章の要点
章の中心的なテーマとなるのが「マールアラーゴ合意」という構想です。これは、資産運用会社出身のストラテジスト、スティーブン・ミランが2024年に発表した論文で提示した、新しい国際通貨体制のアイデアです。
注目すべきは、この論文自体の中身だけでなく、その後にミラン本人が CEA(大統領経済諮問委員会)委員長に就任した という事実。つまり、単なる民間ストラテジストの論考にとどまらず、トランプ政権の政策決定に直結する立場の人物が提案している点が大きな意味を持ちます。
ミランの狙いは、国際貿易システムの再編とドルの切り下げ。これは、ドルが「準備通貨」として常に各国に保有され続けるために、需給均衡点より高く評価され、アメリカが経常赤字を余儀なくされるという「トリフィンのジレンマ」に端を発しています。
彼の提案は、プラザ合意のような多国間協調を再現するのではなく、アメリカ政府が一方的にドル安を誘導する戦略です。その具体的な手段として関税を梃子に利用し、さらに「国際緊急経済権限法(IEPA)」といった法的枠組みにまで踏み込む点が特徴的です。
しかもミランは、関税によるドル高や輸入インフレといった副作用を過小評価していません。第一次トランプ政権時の経験を根拠に、こうした副作用を吸収しながら段階的に政策を進めるシナリオを描いています。つまり、理論は主流派経済学の枠組みの中にありつつも、現実の市場や国際関係を強く意識した実践的な設計図になっているのが注目です。
読んでいて印象的だったのは、この議論が「単なる関税合戦」や「ドル安誘導」という表層的な話ではないことです。むしろ、ドル基軸体制そのものをアメリカ主導で再構築するという壮大な構想につながっているのだと感じました。
特に、論文を書いた人物がそのままCEA委員長という政権中枢の役職に就いたという事実は、現実の政策との距離感を一気に縮めています。机上の空論ではなく、実際にアメリカの政策に影響しうるシナリオとして読むべきだと思わせられました。
続きではさらに深い議論が展開されそうなので、興味深い部分があったら、また紹介していきたいと思います。
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