森友問題が再燃して、バイ・マイ・アベノミクスがいよいよ、bye・bye・アベノ
ミクスになりつつありますね。
そんな第二次安部政権が発足した2012年以降、低迷していた日経平均は2倍以上に
回復しました。
しかしメディアは相変わらず「実感なき経済回復」や、「庶民に関係ない株価上昇」
等と報じますが、ニッセイ基礎研究所と金融庁が作成した2つのレポートを基に
それはある意味正しくないことを説明したいと思います。
けっこ~長くなりそうなので、2回に分けます。
今回はニッセイ基礎研究所のレポートを基に、なぜ日本人が景気回復を
実感できないか説明したいと思います。
http://www.nli-research.co.jp/files/topics/57616_ext_18_0.pdf?site=nli
レポートによると、戦後2番目の長さとなった今回の景気回復に実感が伴わない
理由のひとつは、経済成長率に比べ個人消費の伸びが低いことだと言われています。
なんせアベノミクス始動後の個人消費の伸びは年平均で 0.5%と、実質GDP
成長率の3分の1にすぎません。
レポート内掲載されている下記グラフは、4半期ごとの個人消費伸び率/実質GDP
成長率のグラフで、「1」を上回ると経済成長に対して個人消費の伸び率が
上回っていることになります。
そもそも、日本ではGDP 統計で遡ることができる1955年以降に消費主導の
景気回復が実現したことがほとんどないのに対して、米国では景気回復局面1950年以降
では今回が10回目となるが、そのうち 4回は個人消費の伸びが実質GDP成長率を
上回っています。
このレポートの興味深い所は、日本と米国の実質個人消費(伸び率)と実質GDP
成長率の乖離を要因分析した結果、理由は下記4つに分けられると結論付けています。
労働分配率 ・ その他所得 ・ 消費性向 ・ 交易条件
この表から最初に読み取れるのは、景気回復期に労働分配率低下が個人消費率の
伸びの低さを抑制しているのは共通しているのだが、その他所得と交易条件に
日米で差異があるのが分かります。
この「その他所得(財産所得(純)、社会給付・負担、税負担などから構成)」に
対する差異を、レポート内では下記の様にまとめており、ここがこのレポートの
本質的な部分です
米国では景気回復期には企業収益の改善に伴う配当収入の増加や
金利上昇に伴う利子所得の増加が可処分所得の押し上げに寄与する
傾向があるのに対し、日本では家計の株式保有比率が低いことから
配当増の恩恵が小さく、超低金利の長期化で利子所得の増加が
ほとんど見込めない。
活字を減らして要約すると、アメリカと違って日本は資産に占める株式等の割合が
少ないので、景気回復局面で企業が利益を上げても、配当等の収入を得られていない
から、景気回復の実感がないってことです。
次に交易条件に関して、レポート内では下記のように表現しています
日本の景気回復は、円安や海外経済の拡大を背景とした輸出の増加に
よってもたらされることが多いが、円安は輸入物価の上昇をもたらす。
また、海外経済が好調な時には、世界的な需要の強さを反映し原油価格が
上昇していることが多く、このことも輸入物価の上昇につながる。
と、あります。
しかしこればっかりは基準通貨が「円」の日本に住んでる限り、どうしようも
ありませんが、個人レベルで対応するならそれは外国資本を保有して、景気回復局面の
円安に対し、相対的に自己資産を上昇させるしかありません。
簡単に言うと、海外(特に先進国)の株式や債券を保有しておけばいいのです。
株式投資してないとインフレに負ける!だから日本の株式を買うんだ!と騒いで
動いても、前者の企業収益の改善に伴う配当収入の恩恵は受けれても、円安による
輸入製品の物価上昇には対応ができません。
だから、自国に偏らない国際分散投資が重要なのです。
次にIMF(国際通貨基金)が発表している世界の実質GDPの推移表です。
この表から言える事は、世界中の株式へ分散投資をしていたら、ざっくり年間
3~4%の成長の恩恵を受け取れていたことになります。
景気回復しているのに給与が全く増えない=景気回復の実感がわかないと言われて
いるのだと思いますが、仮に御自身の年収相当を世界株式へ分散投資していたなら、
それは御自身の給与が年間3~4%昇給していることになります。
コーポレートガバナンスって言葉を聞いたことがあるかと思われます。
おそらく超大半の人が、企業の不正行為に関する防止理念的な意味だと思ってるで
しょうが、本質的な意味合いは企業価値を高めて、株主にしっかり還元しましょう
ってことになります。
日本では2000年以降にコーポレートガバナンスが取り入れられ始めました。
従来は利益が出たらそれを従業員に還元する体質だったのが、それだと
コスト増加に伴う対他競争力の低下=株価低下に繋がりますので、株主からすると
たまったもんではありません。
しかしコーポレートガバナンス導入に伴い、利益を従業員に還元するより積極的に
設備投資にまわして企業価値を高めたり(株価上昇)、株主へ配当したりする等で
企業の利益に対する分配の構造が変わってきました。
アベノミクスでは国がより企業にコーポレートガバナンスをしっかりやるように
言っているので、従業員の給与が増えないのは当たり前なのです。
株式投資をやっていた人は景気回復を実感しているでしょうし、お金持ちでも
株式投資をしていない人(お年寄りとか)は景気回復を実感できていないのでしょう。
お金が無いから投資をしないのではなく、国の政策含め産業界の構造が、株式投資を
して企業収益に対する利益を受けていないと、お金が増えない世の中に
なってきているのです。
安部政権が企業に対して3%の賃上げを要求していますが、おそらくこれも
失敗に終わると思われます。
賃上げ要求に対してレポート内では下記の様に書かれています
賃上げの加速は言うまでもなく人件費の増加を通じて企業収益の圧迫要因
となる。過去を振り返ってみると、景気回復局面の序盤は労働分配率が低
下する一方、企業収益が大きく改善するが、景気回復局面の終盤には労働
分配率が底打ちから上昇に転じる一方、企業収益の伸びが大きく鈍化し、
やがて景気がピークアウトするというパターンを辿ることが多いこと
が分かる
結局無理やり賃上げしても個人消費率は伸びないどころか、企業の収益を
悪化させて、株価下落に繋がる可能性があるのでしょう。
では国は、国民の所得を無視しているのか?と言われると、そうではありません。
草の根1本まで税金を取ろうとする国が、株式などの利益に対して非課税とする
制度を始めました。
それが、NISAや確定拠出年金(iDeco、企業DC)です。
国の方針をまとめると
①:コーポレートガバナンスをしっかり導入させ、企業価値を高めさせる
②:①に伴い、国際競争力の上昇に伴う経済成長
③:②に伴い株価収益に対して、長期資産形成に向いた非課税制度の導入
④:③の結果個人資産を増やして、消費にまわしてもらう
⑤:安定した税収に繋げる
です。
今では「所得格差」という単語をよく耳にしますが、これからは「財産格差」が
本格的に訪れるのでしょう
国が何もしていないではなく、自分が何もしていないから、景気回復を
実感できないのです。
次回の後編では、日米の金融資産保有割合の違いから、どれくらいの資産上昇率に
差異があるのかをまとめたいと思います。
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